運動オンチが強くなるために(中嶋師範語録)

 逆上がりの出来ない人へ

武道は、選ばれた人、また何にでも耐えられる精神力のある人がやるものだと思われていますが、体力に自信のない人、精神的に弱い人こそ武道が必要だと思います。

武道の名人、達人と言われる人は、意外に小さな方がたくさんおります。植芝盛平先生は150cm、塩田先生は152 cm、三船久蔵先生は160cm、柔道王座に20年君臨していた木村政彦先生は大きいと言われても170cmしかありません。

そこには何か強くなる秘訣があるのではないでしょうか?とても小さい人の方が有利には見えません。植芝盛平先生の高弟であった白田先生は戦前の内弟子時代を振り返って、

「植芝先生の技を整理して自分の型を作れなかった人は強くなりませんでしたね」

と言われました。そこには一つの糸口が見えます。もちろん諸先生方のようになるには血のにじむような努力が必要になりますが、その補助線上には我々でも始められそうな、またそれを繰り返していけば変身できる、また変質できる方法があるのではないでしょうか。

私は、三段四段当時を振り返ると強く持たれるとどうにもならないことがあり悩んでいました。もっと以前から悩んでいたと思いますが、稽古を続けていけば解消できるものと思っていました。

そのところを理論的に考えると植芝先生は、絶対止まって稽古をしていたはずと常々思っていました。後に前道主先生の話として<昭和21年頃のある日、突然開祖は動き出しました>という話を聞き、なるほどと思いました。

昭和10年前に入門された先生に興味を持っていたところ、偶然にも白田先生に入門を許され、そして先生はそのころの技を選んだように教えて下さいました。

強くなるためのものは植芝先生の生涯の中に全部そろっていると思います。
もちろん足腰の鍛錬等は、時代的背景の中に隠れている部分もありますが、それすらなぜか考えればおのずと見えてきます。植芝先生の技を図鑑のように並べるのではなく、昔からの技を強くなる順番(何のためにするのか)を考えれば誰でも強くなれるはずです。

そして人間は、精神と肉体の関連を考えなければいけないのですが、その説明は道場にて詳しく説明しております。

 料理も早食いはいけません。ゆっくり食べてこそ味わえるのと同じに、技もゆっくり動いてこそ技の機微を味わえ理解できるのです。能力のある人はどうしても早く動きたがります。運痴と言われる人の強くなれる可能性があります。

 初段まではその下地を作るためのものです。その先にある幻想の世界へぜひ旅立って下さい。 持続こそ力なり!です。

中嶋正憲

参照元:https://aikidourayasu.com/leader/